新幹線の対抗馬 近鉄名阪特急アーバンライナーの利用価値は?
大阪と名古屋との移動手段といえば、新幹線、高速バス、近鉄特急、在来線などといった豊富な選択肢がありますが、その中でも手頃な料金、ちょうど良い所要時間などから根強い人気を誇っているのが近鉄特急アーバンライナーです。
実際に乗車時間は新幹線の倍以上になるもののむしろその2時間がちょうど良かったりもしますし、名古屋側は新幹線も近鉄も同じ位置ですが、大阪側は難波発着とミナミへのアクセスは良好であることもあり、新幹線と真っ向から対抗する区間でも特急列車の運行が成り立っています。
さらに、2020年には高級志向の新型車両の導入も予定されており、新幹線に押されて衰退するどころかさらなる発展も期待できる列車です。今回は、そんな近鉄特急アーバンライナーに乗ってみて実際に感じたことを書いていきたいと思います。
近鉄特急アーバンライナーとは
近鉄特急アーバンライナーは、大阪難波駅と名古屋駅とを結び、大阪市内中心部の大阪上本町駅、鶴橋駅のほかは三重県の津駅にしか停まらない専用の車両を用いる特急列車です。
関西圏、中京圏に広大な路線網を持つ近鉄はそのネットワークを駆使して数多くの特急列車を走らせており、その総称として近鉄特急と呼ばれていますが、アーバンライナーはその中でも看板列車といえる存在です。
かつては実質的に名阪間はノンストップ運転でしたが、2012年以降は津駅にも停まるようになりました。それでも長い時間停車せず乗客の出入りがない分ゆったりと落ち着いて過ごすことができます。
なお、だいたい1時間に1本の頻度で運転されていますが、それとは別に途中大和八木や四日市など沿線の主要駅にも停車する、オレンジ色の一般型の特急列車も1時間に1本程度運転されています。ちなみに車両のやりくりの兼ね合いで沿線の主要駅に停車する列車でもアーバンライナーの車両が用いられることもあります。
*スタイリッシュな外観のアーバンライナー。
2種類あり、上が2002年に登場した新型タイプで下が1988年に登場した旧型タイプ。車内設備は同等です。どちらもほかの車両とは一線を画しています。
*ちなみにこちらが一般の特急車両。上が2009年に登場した最も新しいタイプで真ん中は1992年登場のいわゆる中堅どころ。下は1969年に登場した最も古いタイプです。テーブル、コンセント、インテリアなど車内設備の差は結構大きいのですが、どれに当たるかは乗車当日のお楽しみです…また、近鉄の一般特急は複数のタイプを連結して走ることも多いので同じ列車でも号車によって設備が全然違うということもあり得ます。。。
アーバンライナーに関する3つのポイント
ポイントその1 新幹線+約1時間、–約2,000円
移動手段を決めることにあたって考えることは、まず所要時間と料金だと思います。名古屋と大阪との間を結ぶ交通機関は、新幹線とアーバンライナーのほかに、JR在来線、アーバンライナー以外の近鉄特急、近鉄急行、高速バスなどがあります。それぞれについてみていきたいと思います。
所要時間 | 料金 | 本数 | 備考 | |
新幹線 | 約50分 | 5,830円 | 10分に1本程度 |
こだまは1時間10分程度で ぷらっとこだまを活用すれば4,400円 |
アーバンライナー | 約2時間10分 | 4,260円 | 1時間に1本 | チケットレス割引などを活用すれば3,290円 |
近鉄特急(一般) | 約2時間20分 | 4,260円 | 1時間に1本 | チケットレス割引などを活用すれば3,290円 |
JR在来線 | 約2時間40分 | 3,350円 | 30分に1本程度 |
乗り換え最低1回 青春18きっぷを活用すれば2,360円 |
近鉄急行 | 約3時間30分 | 2,360円 | 1時間に1~2本程度 | 乗り換え最低1回 |
高速バス | 3時間~4時間 | 1,500円~4,000円 | 1時間に2~3本程度 | 複数社による運航あり |
こうしてみると新幹線のように圧倒的に速かったり、在来線のように格安といった突出したメリットがあるわけでもないので、よく言えばちょうどいい、悪く言えば中途半端といった感じですが、近鉄もそこを理解しちょうどよさを発揮できるような戦略をとっており、現に利用者にもその点が支持されているように思えます。
ポイントその2 なんば発着が大きな強み
近鉄のターミナルは、いわゆるミナミの中心地、大阪難波です。新幹線は大阪市中心部の北のはずれのほうの新大阪から発着するので、難波のほか心斎橋、道頓堀、新世界などといったところにアクセスする場合は便利です。
難波発着であれば乗り換えもなく新幹線との所要時間の差も実質的に30分程に縮まります。また、高速バスも同様に中心部まで直行しますが、その分渋滞に巻き込まれやすく、時間がかかったり読めなくなったりするので、その点で近鉄特急は優位であるといえます。
一方で、キタの中心地、梅田の場合は新大阪のほうが近いので立地面でのメリットはなくなってしまいます。また、鶴橋駅から大阪環状線乗り換えで京橋や天王寺にアクセスすることもできますがたしかに階段の上り下りは鶴橋駅のほうが少ないのですが、乗り換えの便は新幹線とさほど変わらなくなってしまいます。
近鉄が気合を入れて建設したあべのハルカスも天王寺にあるため乗り換えが必要で、新幹線でも新大阪駅から地下鉄御堂筋線一本で行けてしまうので、アーバンライナーが圧倒的に便利というわけでもないのが残念なところです。
それでも、ミナミの中心部である大阪難波発着というのは大きなメリットであるといえます。
ちなみに名古屋側は同一地点です。名鉄との乗り換えは近鉄名古屋駅からのほうが近いですが。。。
ポイントその3 快適だがテーブル、コンセント、Wi-Fiなど物足りない部分も
アーバンライナーは車体幅こそ新幹線と比べて狭いもののその分座席も新幹線よりも1列少なく、また利用者も新幹線と比べれば少ないこともあって日中であれば隣に人が来ることもあまりないので、ゆったりとした空間を確保することができます。
窓も広くて大きいので、どんどん窓が小さくなっている新幹線の3列席で感じるような窮屈さを感じることはありません。
また、普通の線路を走るのでカーブも多く、レールの継ぎ目もありますが、揺れや騒音は新幹線と比べてもさほど気になりません。これは個人差がありますが、座席に関しても新幹線とほぼ同じくらいの固さで長時間で疲れたり体が痛くなるようなこともありません。
なお、アーバンライナーには1+2列のデラックスシートが1両連結されており、シートピッチは変わらず新幹線のグリーン車ほどの重厚な座席ではないもののよりゆったりと快適に移動することができます。
レギュラーシート(普通車のこと)でも十分快適ではありますが、プラス510円でアップグレードできるので利用価値は十分にあります。
*レギュラーシートの様子
写真が悪いので伝わりにくいですが、窓が大きくスペースもゆったりしています。
*デラックスシートの様子
在来線のグリーン車でも2列+2列の列車が結構ある中で510円上乗せするだけで利用できるデラックスシートは利用価値十分です!
ただし、そんなアーバンライナーですがちょっとだけ残念な点もあります。。。
まずはテーブル、、、
前の座席の背面テーブルのほかに、ひじ掛けからもテーブルが出てきて向かい合わせにしても使えます!というのではありません。テーブルはこれだけです。
また、窓枠のところもご覧になっていただくとちょこんと設置されているミニテーブルのほかは物を置けない構造になっています。
お菓子や飲み物ぐらいなら問題ないですが、お弁当を広げるにはスペースが狭いです。
ましてやパソコン作業はほぼできないですね。。。
ちなみにデラックスシートもほぼ状況は変わらず、折り畳み式で反対側のひじ掛けまで届く幅はあるものの奥行きが狭く、ノートパソコンやタブレットのキーボードを置いてもバランスが悪いため新幹線と比べて見劣りしてしまいます。
また、最近になってようやく一部の車両につき始めたようですが、コンセントが配備されていないことのほうが多いので充電はできないと思っていたほうがいいかと思います。
そして、最近では至る所で公共のWi-Fiが飛んでいることも多いですがそういった設備もありません。途中山間部でトンネルに入り電波のつながらない区間もあるので新幹線と比べて不便だと感じてしまうかもしれません。
2時間、ゆったりとした空間で移動できるからこそ、時間の活用の幅を広げるという意味でもその点は改善していただきたいなと一利用者として感じました。
そのほか、最近は大きな荷物を抱えて乗車する方も多いので、空港アクセス列車のような大型荷物置き場も設置してほしいですね。
アーバンライナーはこんな方におすすめ
大阪難波付近に用事がある
先ほども書きましたが大阪の中でも難波付近が目的地なのであればアーバンライナーを活用するメリットは大きいです。また、乗り換えをするにしても日本橋や京セラドーム大阪といったところには同じホームで別の列車に乗るだけなので抵抗感もさほどないはずです。
そこそこ急いでいるが節約したい
ずばり、ちょうどよさを発揮するわけですが、時間もお金も有り余っているわけではないときに移動するのであればかなりバランスの取れた選択肢になるのではないでしょうか。ビジネスであれば時間を最重視することも多いと思いますが、遊びに行くときやイベントに参加するとき、特に決まった時間に遅れるわけにはいかないときにはベストな手段だと思います。
2時間を活用する術がある
ちょうど移動中にやりたいことがあるが新幹線だとせわしないと感じる時に、あえて2時間かかるアーバンライナーに乗るのもいいと思います。読書や音楽鑑賞、睡眠はもちろん、充電や電波の問題さえクリアすれば、録画しておいた映画やドラマ、アーティストのLIVE映像、サッカーの試合を見るのにはちょうどいい時間ではないでしょうか。あるいは、親しい同行者がいれば、2時間退屈することもないでしょう。
列車好き
思い思いのアーバンライナーの旅を楽しんでください。
2020年登場の新型車両に期待!
そんなアーバンライナーですが、実は2020年に新しい車両がデビューすることが決まっています。いままでの白を基調とした外観から打って変わって真っ赤な車体となるようです。
座席は今まで以上に広くなり、レギュラーシートでも新幹線のグリーン車並みのシートピッチを確保しているようで、デラックスカーは新幹線のグランクラス並みの設備となるようです。
さらにアーバンライナーとは異なる新しい名前が与えられる可能性もあります。今までの車両と設備に格差が出るため料金は少し上がるかもしれませんが、新幹線を超える金額には設定しないはずですから、今まで以上にコストパフォーマンスに優れた、快適な移動手段になりそうですね。
少なくとも全席コンセント設置で、無料Wi-Fiありとのことなので、付帯設備も大きく改善されそうです。ただ、レギュラーシートも含めた全ての座席が後ろの人を気にせずにシートを倒せるバックシェルシートとなることから、前の座席の背面テーブルは付かないのではと思われます。
肘掛のテーブルのみだとしても今のものより大き叶っていることを祈りたいですね。
おそらく今年の年末ごろには全容が明らかになるのではないでしょうか。新しい近鉄特急に期待したいと思います。
まとめ
さて、長い記事になってしまいましたがざっくりまとめると以下のようになるかと思います。
- なんばからなら乗り換えなしで便利
- 『ちょうどいい』が最大の売り
- 付帯設備は改善の余地あり
- 2020年からはさらにバージョンアップ予定!期待大!
ということで、近鉄特急アーバンライナーのメリットをいろいろな方に活用していただければ何よりです。最後までお読みいただきありがとうございました。